
[提言①日本産業の再生に向けたDX基盤整備と”人を中心にした新しい産業モデルの提案~QRコードの印字によるDX推進とTPSの国家OS化~http://scccreal.cloudfree.jp/school/wp-content/uploads/2026/05/資料①概要(日本産業の再生に向けたDX基盤整備と産業モデルの提案)-1.pdf
【解説】QRコード印字とTPSによる資金循環速度(SCCC)の向上
全取引伝票へのQRコード印字と資金循環速度向上を提案(SCCC).pdf
本解説では 全取引伝票にQRコードを印字する意義とTPS(トヨタ生産 方式)による資金循環速度向上の 関係を解説します。
Ⅰ 論考: 流れ創りの新KPI “売上高/SCCC” (リードタイム当り売上高)
野村政弘(元デンソー)記
利益って何だろう? 「作ってナンボ」から、「売れてナンボ」へ
会社にとって利益を上げることは生命線。だが、そもそも利益を「作ってナンボ」で考える フォード以来の伝統的知識と、トヨタが中小企業時代に始めたJITの「売れてナンボ」の 知識では、結果に天地の開きが出る。本社がこれに気付くことがJIT導入成功の出発点。
1)制度会計の常識的知識
個当り原価=その製品を製造するのに要した費用(人件費+設備費+仕入費他)/生産数量ということは、「利益=売上―原価」の「利益」は、在庫(材料費、人件費、減価償却費など仕掛原価の収納箱)をどんどん作るだけで、1個当たりの単位原価はどどんどん下がり、従って 利益はどんどん増える。これが「作ってナンボ」のロジックである。
これに対しトヨタの大野さんは、「私が40年間戦い続けたのは、このとんでもない会計の考え方だ」と米人記者のインタビューで語った。言い換えれば、借金して設備投資をして、賃金を(現金で)支払っても、売れないで残っている在庫は、会社の倉庫に「資産」という名目で眠っている。つまりお金(キャッシュ)が 資産(在庫)という名目で滞留し、現金未回収状態になる。それでも在庫増分だけ、帳簿上の利益は増える。そこから配当をすると株主は喜ぶ?この名目上の利益に追い打ちをかけて、さらに「法人税」という現金支出が待ち受けている。これが今の多くの製造業の現実。そのため中小企業経営者はお金の工面に走り回り、挙句の果ては債務超過の”黒字倒産”という事態となる。
2)次に考えよう ”ROE”(自己資本利益率)って何 ?
そこに追い打ちをかけてきたのが、株主資本主義で最もポピュラーな米国発の指標ROE(自己資本利益率)。ハーバードビジネススクールからは、「良い会社かどうかはROEで判断すべき」と言われ、日本の経済産業省のまとめた「持続的成長に向けた長期投資研究会報告書」(2014年)でも「ROE8%が日本企業の遅れを取り戻す」とされた。
ROE指標では、上述の作ってナンボの利益計算に加えて、更に借入金を増やすとその分「自己資本の比率が下がり」ROEがよくなる( これを「レバレッジ効果」と称し、「リー マン・ショック」の引き金なった)。
結局伝統的知識では、借金をしてでもお金を集めて、必要以上に大量生産をして在庫を溜めて単位原価を下げることが、利益とROEを良くして株価を上げる一番の方法となる。この「作ってナンボ」の思い込み(知識の型)が、バブル経済崩壊後の経営者を苦しめ てきたといっても過言ではない。この思い込みを直すKPIはないものか?
3) 新KPI SPL~ 「売れてナンボ」の「回転」重視型「三方よし」経営の提唱
これに比べて、製品を売って回収したお金を元手にして、その自己資金で設備、材料を買い、賃金も支払って生産し、それを顧客に販売して回収した増加したキャッシュを、次の増産や開発に使う。これをを繰り返せば、同じ自己資金で次第により多くの「利益=増分キャッシュ」を生み出すことができるようになる。常識人なら誰が考えても、これが一番競争力(持続可能性) ある経営と分かる。これがTPSの 「売れてナンボ」の知識にほか他ならない。この「売れてナンボ」の知識をサポートする指標を提唱する。
SPLSales Per Lead time):リードタイム当たり売上高= 売上高/SCCC SPL値が高い程、資金回転増による利益増イコールキャッシュ増となる。SPL算式には発生主義会計の「利益」の項目はないが、「実質的な儲け」である懐(ふところ)のカネ、いわゆる手元流動性(手持ち現金)が増えているので「黒字倒産」など起きようがない。しかも、SPLの分母のSCCCは「仕入れ先への支払いをより早く」をするほど、SPL値は良くなる。これは、日本企業の原点ともいえる「三方(売り手、買い手、世間)よし)」経営のBtoB生産性を押し上げる。米国発のROEでは「株主良し」だけが焦点であり、BtoB を含む「世間よし」にはつながらない。日本型経営とアメリカ型経営の本質的な違いがここにある。 また資本市場では、企業のROEが「作ってナンボ」と「売れてナンボ」のどちらで達成されたのかを,SPLで簡単に見破ることができる。SPL指標を媒介に、20世紀の「株主資本主義」から、21世紀の「ステークホルダー資本主義」への進化が実現しそ うである。 以上
Ⅱ論考: スマート資本市場:ROE(量)とSCCC(速度)の連携で捉える競争力 (河田 信)

(出所:日経BPより筆者編集 単位 ROEは%、SCCCは日数)
6社比較図で分かるように、ROEは、優劣交錯した団子レースで、しかも、2020年度は、トヨタのROEが、経営危機に直面した東芝、シャープにも劣るという“奇妙な”結果となっています。 2015年当時から経産省のプロジェクトとして、「ROEは8%超が望ましい」と促された結果の“合法的粉飾”によることが、ROEの好転に対応すべきSCCCが逆に悪化していることから明らか。(シャープの2020年度の好転は、鴻海によるシャープ買収の結果です)。 一方、SCCC は、多重下請け構造の日本における「支払いはより早く」の重要性を認めた経産省経由で2020年度内閣府骨太方針として「2023 年までに日本のSCCC5%改善を目指す」とされましたが、5%改善どころか、先に<図表7>で示したように、コロナ禍で逆に200%近く大幅に悪化してしまいました。 しかし、先に取り上げた「官民連携のカネの流れ10倍速プロジェク」で、大幅改善余地があることに変わりはありません。その原因は、今まで「コストではない」ということで、とかく無関心できたBtoG,BtoBの双方に内在する有する膨大な「待ち時間、バッファ」という「一番ピン」の存在に官民共に気付くことにあることは、初級編で述べた通りです。
学際研究(Inter-disciplinary Research)の奨め
講演要旨(ポストコロナ世界対応の経済学、会計学、IoT・AIの統合に向けて)


演題:政策提言 ポスト・コロナ経済V字回復を可能にする「新しい資本主義」
~「カネの流れ10倍速」と「知識の型の転換」~ 名城大学名誉教授 河田信
2022/4/28 15:00 於 日本技術士会中部本部会議室 2022 EngineeringHQlecture .pdf へのリンク (プレゼン資料) <要点解説> Ⅰ プロローグ : 新型コロナショックで、グローバルサプライチェーンが寸断。ホンダも、中国からの輸入部品ストップで、工場は生産一時休止と聞いた。この時期の 経営や行政の喫緊課題は「モノとカネ の流れの速さ(リータ イムまたは 資金循環速度(SCCC)」のV字回復、つまり「流れ創り」で ある。 だが、流れ創りの先輩格のトヨタ幹部からも、「指導先の企業がジャストインタイムを折角導入 しても、1-2年で すぐ逆戻りする例が多い」と、よく聞くのは何故か? 「 売れた量以上に作る」無駄を、本社や、既存の 会計学や経済学ではうまく説明できない から ではないか? トヨタですら(リーマンショック当時)”量”優先の思い込みを犯して、空前の営業赤字に転落したことがある。この時は社長自身が「反省力」を発揮して、「売れた数しか作らない」トヨタの原点に帰ろうと宣言して、4年後に、過去最高益に回復した。 ホンダは、当時、人件費が日本の20分の1の中 国に「コストダウン」のため、部品工程を全面外注し、組立工程を国内で行う、「スマイル戦略」に拠ったが、リードタイムが延びて資金繰りが悪化、ついに岐阜の美濃加茂工場の閉鎖に追い込まれた。21世紀20年代のポストコロナ経済の今、まさに「量より速度」「モノ、カネ、情報の流れ速度」モノやカネの寝ている時間のムダを(現場だけではなく)本社や、経済学、会計学がうまく説明、共有できるか否かが勝負の時を迎えている。 前世紀とは真逆の「アウトソーシングよりインソーシング」「サプライヤーへの支払いは(遅いほどではなく)早い程、お互いが得」など、今までとは真逆の知識の型の転換競争である。
Ⅱ政策提言
2020年6月 政府骨太方針で、企業の”BtoB”の上に政府の”BtoG”として公共工事の「盆暮れ 払い」から「60日以内支払い」への短縮を率先垂範で実行。これだけで、日本のSCCCはドイツを追い越す。その上でさらに民間のBtoB支払いサイトを60日以内からさらに「翌週払い」から「瞬間払い」へと、デジタル化により「カネの流れ10倍速」の実現を狙う。
《中部地区モデル》~改革は地方から~
政府主導のデジタル化、電子受発注システムは、残念ながら、中小零細企業の2/3は対応はムリである。また、年商1000万円以下の「免税事業者」は、消費税対応上の事務手間ピンチ(インボイス制度)に直面している。そこで、中部地区としてはデジタル化の前に、「全伝票QRコード化」を進める、「這えば立て、立てば歩め」で中小零細企業のインフラ構築で、ピンチをチャンスへの逆転を狙う。慣習の悪習ともいうべき「月次バッチ処理」の小ロット化と、決済までの一気通貫処理で資金繰り改善にも貢献する。
Ⅲ生産性の奇跡(Productivity Miracle)=「経営士」と「技術士」コラボ時代
- 本社力次第で、「ごみ工場」が1年内に「1個流しのスマート工場」へ。 国境を越えて中小企業に起きている「速度生産性(リードタイム短縮)の奇跡」(マレーシア、イラン、カンボジアなど)にも注目しよう。 一方、21世紀経営の勝負を決めるのはデジタル化、AI 化であることも確か。だが、政府、民間とも要注意 は「量」から「速度」への価値観と流れ重視へのKPI切換えを先行させることが必須。ROEなど 短期利 益 偏重型KPIを21世紀型中長期流れ改善KPIに是正できた企業にのみ、カネの流れ10倍速の「生産 性の奇跡」は訪れる。
Ⅳ エピローグ : 「技術士」と「経営士」のコラボ期待
在庫許容などでムリして短期損益をよくすると、キャッシュ不足から倒産へ、一方、AI、DX化時代を迎えたからといって、「機種別レイ
待ち時間のムダや仕掛低減などは、一旦は減益でもキャッシュ増と資源余力増
で、V字回復と三方よし経営へ。この関係を本社が理解できれば、生産性の奇
跡は確実。
アウト」のままで、センサー設置やAI化を行ってもほとんど効果はゼロ。
そこで、先ず「流れ重視の価値観」へ切換えて、「U字型レイアウト」の流れ
改善をトライしてから、次にAI、DXを適用する順序が肝要。 そのためには政府、企業、大学、経営コンサル、大げさに言えば人類そのものが、「縦統治、部分 最適、現状維持バイアス」から「横連携、全体最適、現状変革思考」への「頭の切り換え(価値転換)」が問われている。 これが21世紀のポストコロナ経営のパラダイムシフトの課題ではないだろうか。